運動会でスマホを構えて、こう思ったことはないでしょうか。
「豆粒みたいにしか写らない」
トラックの反対側を走る我が子。スマホの画面いっぱいにズームしても、輪郭がぼやけて誰だか分からない。帰宅して写真を見返すと、使えるカットが1枚もない。
先日、息子の高校の体育祭にミラーレスカメラと望遠レンズを持ち込み、一日撮影してきました。結論から言うと、望遠レンズがあれば写真は劇的に変わります。ただし、機材以上に重要なことがありました。
この記事では、実際に撮って分かったことを正直に書きます。うまくいったことも、うまくいかなかったことも。
※本記事の作例はすべてJPEG撮って出しです(リサイズのみ)。
※写真に写っている生徒の顔は、個人情報保護のため加工・後ろ姿のみを使用しています。
なぜスマホでは限界なのか


(光学5倍+デジタルズーム)
スマホのカメラは年々進化していますが、望遠だけは物理的な壁があります。iPhone 15 Pro Maxの光学ズームは120mm相当まで。それ以上はデジタルズーム、つまり画像を切り取って引き伸ばしているだけです。
看板の文字を見てください。デジタルズームでは輪郭が溶けています。
一方、望遠レンズは光を集める仕組みそのものが違います。450mm相当まで光学的に寄れるので、拡大しても文字が読める。(注意:下記はさらに超解像ズームで2倍にしています)


(光学ズームと超解像ズーム2倍)
トラックの向こう側にいる我が子を撮るには、この差が決定的になります。
【最重要】位置取りで9割決まる
ここが本記事で最も伝えたい部分です。
高価な機材を持っていても、立つ場所を間違えると良い写真は撮れません。逆に言えば、位置取りさえ押さえれば、機材の差はある程度埋まります。

図の番号は、実際に私が立った位置です。ポイントは、競技によって選ぶ基準が違うこと。順に説明します。
位置1:対象物は「反対側」から撮る
当たり前のようで、意外と見落とされる点です。
入場門を撮りたいなら、門のすぐ横に立っても撮れません。反対側から狙うのが基本になります。
なお、入場行進で我が子をアップで狙うのは、正直かなり難しい。集団で混雑しているため、先頭か外側にいなければ抜けず、それはほぼ運です。しかもすぐに後ろ姿になります。
入場のシーンは「会場の雰囲気を残すカット」と割り切るのが現実的です。動画なら流れを追う意味がありますが、静止画では狙いすぎないほうがいい。
※どうしても場所が取れない場合は、この限りではありません。撮れる場所から撮るしかない、というのも実際です。
位置2:動きが読めない競技は「中央」
騎馬戦のように、選手が縦横無尽に動く競技があります。この場合、どこかに狙いを定めるより、トラック中央付近に立って万能に対応するほうが結果が出ます。
これは運動会に限りません。サッカーのように動きが読めない競技も同じ考え方です。特に動画は撮影中の移動が難しいので、中央固定が前提になります。静止画なら、前後半で位置を変えずに済むという利点もあります。
位置3または4:リレーは「事前に決める」
リレーで最初に決めるのは、我が子がどちら側からスタートするかです。
競技中の移動はほぼ不可能なので、位置は事前に確定させておきます。上側で待機しているなら位置3、下側なら位置4。どちらか一方であり、両方には立てません。
狙うのは、バトンを「受け取る」瞬間です。
受け取る側は走り出す方向を向くので、表情が入ります。逆に渡す側を狙うと、我が子は背中を向けている確率が高い。同じバトンパスでも、結果が大きく変わります。
なお、バトンパスを狙わない場合は、むしろ疾走シーンのほうが撮りやすい。バトンパス地点は選手が密集しますが、直線区間なら被写体が孤立しやすく、フォームもきれいに写ります。位置の制約がゆるいぶん、背景から距離が取れる場所を選べます。
被写体を浮き上がらせるには


被写体の後ろに観客席やテントが近いと、写真が雑然とします。背景までの距離が遠い位置を選ぶと、望遠レンズの圧縮効果で背景がある程度整理されます。
なお、F6.7の望遠ズームでは「背景が大きくボケる」ことは期待できません。これは後の章で正直に書きます。
前日までに準備すべきこと
走順とコースを把握する
トラックのハーフだけを走るケースが多く、我が子がどちら側を走るのかを事前に知っておくだけで、当日の動きが全く変わります。プログラムを入手し、可能なら本人に確認を。
前章の「位置3か4か」も、この情報がなければ決められません。
見つけやすい服・靴を用意する
これは実際にやってみて痛感しました。
遠目から我が子を発見するのは、想像以上に大変です。
体育祭は全員が体操服やクラスTシャツで、同じ色の集団になります。ファインダー越しに探していると、それだけで数秒が過ぎ、シャッターチャンスを逃す。
対策として、靴や靴下、ハチマキなど、目立つ色のものを身につけさせておく。前日に一言お願いしておくだけで、当日の発見率が変わります。
場所取りは、多少図々しいくらいで
良い位置は限られています。競技の開始直前ではなく、前の競技のうちに移動しておく。遠慮していると、撮れないまま終わります。
カメラ設定:実際に使った値
基本設定
| 項目 | 設定値 | 理由 |
|---|---|---|
| モード | S(シャッター優先) | 動きを止めることが最優先 |
| シャッタースピード | 1/1000〜1/1250 | リレー・騎馬戦は1/1250 |
| ISO | オート(上限6400) | 曇天では上がりやすい |
| 絞り | 開放のまま | 望遠端F6.7に余裕はない |
| ホワイトバランス | 曇天に固定 | オートだと連写間で色が揺れる |
| ドライブ | 連写Hi | 一瞬を逃さない |
| 手ブレ補正 | レンズ側ON | α6400にボディ内補正はない |
ホワイトバランスの固定は地味に重要です。オートのままだと、連続して撮った写真の色味がバラつき、後で並べたときに統一感がなくなります。
AFエリア:ゾーンとスポットの使い分け
ここは実際に両方試しました。


| 長所 | 短所 | |
|---|---|---|
| 中央スポット | 狙った選手を確実に指定できる | 枠が少しでも外れるとピンボケを連発 |
| ゾーン | 動く被写体でもズレが許容され、当たりが多い | 混雑していると他人にピントが移る |
結論:総合的にはゾーンがおすすめです。
中央スポットは「狙える」のが魅力ですが、走る被写体に枠を乗せ続けるのは想像以上に難しい。AF枠が半分ズレただけで背景にピントが持っていかれ(後ピン)、連続でボケます。
ゾーンなら多少のズレを吸収してくれます。ただし選手が密集する場面では、我が子ではなく隣の子にピントが合うことがある。競技によって使い分けるのが現実的です。
被写体認識は過信しない
最近のカメラには人物認識機能がありますが、集団競技では信用できません。全員が「人物」なので、意図しない相手を掴みます。
コツとしては、顔ではなく胴体を狙うこと。顔は輪郭で枠が外れやすいのに対し、胸から腹のあたりは面積があり、多少ズレても被写体に乗ります。
競技別の撮り方
入場門・垂れ幕
競技が始まる前に、会場の雰囲気が分かるカットを撮っておきます。後で見返したとき、その日の記憶を呼び戻すのはこういう写真です。ここは広角の出番。

応援合戦
スマホでも会場全体は撮れますが、それは「そこにいた」という記録にしかなりません。演技の中身が残るのは望遠側です。引きで撮ると人が小さくなりすぎるので、望遠で寄ったほうが伝わります。

騎馬戦
動きが速く不規則なので、シャッタースピードは1/1250以上。崩れる瞬間の前後を連写で押さえます。位置取りは前述の通り、中央付近が無難です。

リレー
本記事の主役です。詳細は位置取りの章の通り。
バトンパスの瞬間は、走者2人だけが画面に入る貴重な場面。冒頭の写真と、位置取りの章の作例がそれです。集団から抜けやすいので、ここを狙ってください。

正直に書く:この機材の限界
作例を見て「良さそう」と思われた方に、先に伝えておくべきことがあります。
背景はボケません
使用したレンズは望遠端でF6.7。背景を大きくぼかす写真は撮れません。
雑誌で見るような「主役だけが浮き上がる」写真を期待していると、がっかりします。ボケを最優先するなら、F2.8クラスの明るいレンズが必要です。
AF追従は完璧ではない
正直に言うと、ピントを外したカットもそれなりにありました。
ただしこれは機材だけの問題ではなく、私の技術不足もあります。走る被写体を追い続けるのは慣れが要る作業で、初日で完璧にできるものではありませんでした。
最初は外します。それが普通です。
集団競技では単体を抜きづらい
騎馬戦や綱引きのように選手が密集する競技では、我が子だけをきれいに切り取るのは困難です。ある程度は許容するしかありません。
実は450mmは使わなかった
これが最大の発見でした。
リレーの撮影で、450mm相当まで使う場面はありませんでした。
理由は単純で、基本的に全身を撮るからです。顔をアップにしたい場面は稀で、実際には200〜300mm相当あれば足ります。喜んでいる瞬間の表情を大きく撮りたい、といったケースは限定的でした。
「もっと寄りたいから望遠を買う」と考えている方は、ここを誤解しないでください。必要なのは、全身が画面に適切な大きさで写ることです。
では300mmまでのレンズで十分かというと、話はそう単純ではありません。
会場で見たプロの機材
撮影中、明らかにプロと分かる方がいました。機材はこうです。
- フルサイズカメラ2台持ち
- 1台に24-70mm F2.8
- もう1台に70-200mm F2.8
総額は軽く100万円を超えます。
なぜ2台なのか。1台では焦点距離が足りないからです。広角と望遠を瞬時に切り替えるには、2台ぶら下げるしかない。
これがプロの解答です。そして、保護者には現実的ではない選択肢でもあります。
結論:どのレンズを選ぶべきか
一日撮影して見えてきた選択肢は3つです。
選択肢1:本格派(100万円超)
フルサイズ2台+F2.8通しレンズ。画質もボケも最高。ただし価格と重量が非現実的。
選択肢2:レンズ交換
標準ズームと望遠ズームを持ち、競技に応じて付け替える。安価だが、競技中の交換はほぼ不可能。砂埃の中でレンズを外すリスクもある。
選択肢3:高倍率ズーム1本
広角から望遠までを1本でカバー。画質やボケでは劣るが、レンズ交換なしで一日を通せる。
私の結論
運動会一日を1台で撮り切るなら、高倍率ズーム1本が現実解です。
リレーだけを撮るなら、70-200mmのほうが良い写真が撮れます。明るく、ボケも得られる。でもそれでは入場門も応援合戦も撮れません。
運動会は、広角が要る競技と望遠が要る競技が交互に来るイベントです。その全部を1本で通せることに、このレンズの価値があります。
使用機材

- カメラ:SONY α6400(APS-C)
- レンズ:SIGMA 16-300mm F3.5-6.7 DC OS | Contemporary(換算24-450mm)
私が使ったのはSIGMA 16-300mm(35mm版換算24-450mm)です。ボディは中古のα6400で、7〜8万円台から見つかります。レンズは中古なら8〜9万円台。合わせて16〜17万円ほど。
運動会だけのために買うなら、正直おすすめしません。年間を通じて使うかどうかで判断してください。
■ レンズ:16-300mm(35mm版換算で24-450mm)。この記事の作例はすべてこのレンズで撮影しています。
■ カメラ:2019年発売ですが、動体撮影では今も十分実用的です。
■ 中古を探すなら、こちらのお店がオススメです。保証もつきます。


■ オプション:連写を多用するので、高速なSDカードと予備バッテリーは実質必須です。α6400はEVF使用で約360枚が目安なので、一日撮るなら3本あると安心します。
まとめ
- 位置取りが9割。競技によって基準が変わる
- 対象物は反対側から(位置1)
- 動きが読めない競技は中央(位置2)
- リレーは我が子のスタート位置で事前に確定(位置3 or 4)
- 前日の準備:走順の把握と、目立つ服・靴
- AFはゾーンが総合的におすすめ。胴体を狙う
- 必要な焦点距離は200〜300mm相当。450mmは余る
- ボケは期待しない。運動会は記録が主
機材を揃えれば良い写真が撮れるわけではありませんでした。どこに立つかを考えることが、いちばん効果がありました。
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